研究概要 |
磁性流体は,強磁体の微粒子を水性または油性の溶媒中に分散させたコロイド液体であり,磁場の作用下で波面形状の変化や粘性の変化を起こす興味深い流体である。一方,自然界の水中生物の泳ぎに見られるように,進行波型の運動をすることによって推進力を得ることができることが知られている。本研究者は,以前より,この進行波型推進機構を,磁性流体と薄い弾性膜からなる構造と,外部から進行波型磁界を加えることによって実現することを試みてきた。 本研究では,これらの推進機構が磁性流体と弾性膜の連成波動現象に支配されることに着目した。また,今後磁性流体を能動的アクテュエーターに適用しようとする際にも,この連成波動および連成振動が重要な研究対象となることを予測し,その基本的な現象を把握することを目的とした。ここでは,2次元的な薄い弾性膜におおわれた磁性流体層および弾性円管内に封入された磁性流体中の波動伝播と振動現象について,実験と,部分的な理論解析を行った。また,実際に推進機を作成して,推進動作に及ぼす波動の影響を調べた。 その結果,磁性流体中の波の干渉,弾性膜との連成分散性波動の伝播形態についての興味ある現象を見出すとともに,推進機動作の基本的な機構についての知見を得た。ただし,磁性流体が,磁場と非総型の相互作用を行うことや不均質コロイド流体の持つ複雑な挙動のために,数学的解析の上での未解決や定量的な評価の上で今後の課題を残した。
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