研究概要 |
壁面噴流中に見られる大規模渦(一対の渦)構造の発生機構とその役割を調べるため,一様流(外部流)の速度Ueと壁面噴流の速度Umとの比Um/Ue(速度比)を3種類変化させた場合の実験を実施した。これを3つの観点,すなわち,組織構造の形象,時間平均量との関係,流れの可視化結果から明らかにする。以下に得られた結果を要約する。 (1)3種の速度比Um/Ue=2,2.9,4の場合について自己保存条件を満たす流れ場を実現し,平均及び乱流量分布の相似性を明らかにした。 (2)局所摩擦抵抗係数,長さの尺度と速度比との関係を係統的に調ベ,レイノルズ数に対する依存性を明らかにした。 (3)VITA法で検出される渦形象は,検出基準時刻をはさみ減少から加速に至るパターンを示す。この渦形象の平均発生周波数は,速度比Um/Ueの減少につれ増加する。 (4)一対の渦構造の根幹部の傾きは,速度比の減少につれ小さくなる。これは外層側の大規模渦構造がより早く対流輸送されるためである。また,スパン方向への組織渦の広がりは位相差が零である。 (5)4象限解析法から得られた結果と一対の渦構造との対応を明らかにした。すなわち,渦構造のうち下方渦は2象限の場合根幹部の上昇流に対応し,一方4象限は巻き込みによる高速流体の下降を示す。上方渦については,1象限は根幹部の上昇流に対応し,4象限は巻き込みによる下降流を示す。 (6)VITA法と4象限解析法による結果の対応は,下方渦の2象限による効果はejectionに,一方上方渦の4象限による効果はsweepに対応する。 (7)壁面噴流の非対称流場となる原因が一対の渦構造の大小にあり,それがejectionとsweep過程とに密接に関係することが明らかとなった。
|