研究概要 |
本年度は,直接シミュレーションによって調査された自由せん断流における不安定波の成長とせん断流の構造についてこれまでの研究成果を総括した.線形安定性理論で予測される不安定モードの成長は遷移初期領域の自由せん断流の構造に支配的であり,それぞれ成長率が極大のモードの非線形成長(モードエネルギーの成長と飽和)によって基本的構造が形成される.遷移過程後期では,二次不安定性がより支配的になり基本構造の変形や崩壊など急激にその形を変え乱流遷移する.その中で,本年度明らかになった特徴は,伴流では長波長三次元波特に低調波斜モードに対する二次不安定性から,ラムダ渦構造が二次元不安定波と三次元不安定波の強い非線形相互作用により形成されることが上げられる.また,サドルポイントに発生する流れ方向や主せん断方向渦が成長しひずみ場との非線形相互作用によって構造を変化させることや,微細な渦構造が短波長斜モードとの非線形相互作用によって形成されることなど構造の細部について非線形過程の役割と構造の関係が明らかになった.いっぽう,圧縮性の影響は混合層や伴流および二次元憤流について調査され不安定モードの成長に及ぼすマッハ数の影響が明らかになった.そして,三次元攪乱の成長率が二次元攪乱の成長率と同程度となるマッハ数では混合層の下流では流れ方向渦構造が支配的になるとともに強いひずみ場を間欠的に形成されることが示されこれによって圧縮性混合層の三次元大規模構造が形成されることが明らかになった.強いひずみ場ではトポロジー的分類によってsaddle/saddle/unstable node流れが高散逸領域を形成してヘリカルペアリングがある渦が支配的領域においてはUnstable focus comprerssing構造が高散逸領域を形成していることが明らかになった.研究成果を総括すると,乱流エネルギーの生産や散逸など乱流素過程や乱流統計量は遷移後期/初期乱流領域において不安定モードの非線形相互作用によって支配されていることが明らかにされその操作がマクロとミクロスケールの乱流制御にとって重要であることを示した.
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