昨年度までのデータから蒸発部の熱伝達の整理法を完成し、その成果を国際会議において発表した。今年度は凝縮部の熱伝達と断熱部の温度分布に関し重点的に研究を行なった。凝縮部については昨年度までのステンレス管から伝熱面の温度を正確に測定するため銅製に変更し、また助走区間の関係から、冷却水の流れが乱流となるように冷却流路の改良と高容量のポンプを新設した。断熱部に関しては長さを長くし、測定点を1点から3点に増やし実験を行なった。実験データを整理し以下の知見を得た。(1)ヒートパイプの設計書に書かれている層流膜状凝縮の式は封入率が小さくかつ伝熱量が小さい場合にしか適用できないこと、また液膜の乱れを考慮した式も適用範囲が広くないことが示された。伝熱量が大きくなると蒸発部でエントレインされた液滴や液塊が凝縮部に飛散し、そのため凝縮部上部の液膜を厚くする効果が顕著になり、上部の壁温が低くなることが分った。数値解析も合せ行なうことにより、この液のエントレインメントを考慮しないと凝縮部の解析は精度が悪くなることを明かにした。また、直接通電型ヒートパイプでは伝熱量を正確に見積もることが困難であるので、次年度はこの凝縮部の熱伝達を解明するため、蒸発部をシースヒータに改良し、データの蓄積と解析を行なう予定である。(2)蒸発部に出来るだけ近いところで断熱部の壁温を測定しても、加熱条件によっては管内の蒸気温度より低い温度を示し、熱伝達を評価するための代表温度としては適切でないことを明らかにした。
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