回転流中における火炎の高速伝播現象は、ボルテックス・バーステイング・メカニズム、すなわち、渦のような回転流中で燃焼が行われると、燃焼で生じた高温ガスが未然混合気の渦芯中に引き込まれ、その結果、火炎が高速で伝播できるという機構で説明されているが、昨年度、実験で火炎速度と回転速度との関係を調べたところ、定性的にはともかく、定量的にはこの考えでは十分に説明できないことが判明した。 そこで本年度は、この高速火炎伝播現象をより本質的に理解するため、理論の前提となる渦芯上での圧力分布について詳しく測定することを計画し、実施した。もし理論が正しければ、未燃ガス中では、密度が大きいため、遠心効果により渦芯上での圧力は周囲に比べかなり低くなるが、燃焼ガス中では、密度は高温のため低く遠心力が小さいので、渦芯上の圧力低下は少なく、結果的に火炎前方(未燃ガス側)の圧力に比べ火炎背後(燃焼ガス側)の圧力が高くなるはずである。 さて、応答性の良い微差圧計とマルチ・デジタイザを購入し、昨年度製作した渦型燃焼器内を伝播する火炎と、比較として、通常の伝播火炎について火炎面前後の圧力分布を測定した。その結果、静止予混合気中や回転のない一様予混合気流中を伝播する火炎では、火炎前面に比べ火炎後方で圧力が減少するのに対し、回転予混合気流中では、理論で予測される通り、火炎前面に比べ火炎後方で圧力が上昇し、その増加量もほぼ理論値と同程度となることが明かになつた。しかし、火炎速度そのものは、理論値のせいぜい1/2〜1/3に過ぎないことが明かになつた。 以上の結果は、昨年12月に名古屋で開催された第30回燃焼シンポジウムの席上で発表したほか、国際学術雑誌に投稿中である。また、前年度得た結果については、本年度さらに検討し直し、その結果は、Progress in Astronautics and Aeronautics 誌上に掲載の運びとなっている。
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