本研究では、下向きフイン付伝熱面を用いて流下液膜内に密度対流を発生させ吸収伝熱促進する方法につき、実験的研究を行った。 最初に実験装置の検定を行うために、平滑伝熱面を鉛直に設置し水蒸気の凝縮実験を行った。実験条件は、吸収式ヒ-トポンプの作動条件を考慮して主流蒸気が70℃の飽和状態(蒸気圧力は約0.3気圧)とし、壁温を変化させて熱伝達率の測定を行った。その結果、膜状凝縮状態での熱伝達率はヌセルトの解に比べて約10%程度低い値となった。これは実験容器内の圧力が大気圧に比べて負圧となるため空気の混入が避けられないためと考えられ、空気が混入したときの熱伝達率を理論計算したところ、空気のモル濃度が約0.001%に相当した。このように僅かな空気の混入によっても熱伝達率は大きく低下し、実機において空気の混入の影響が重要であることが明らかとなった。 次に、伝熱面としてフィンの高さ3mm、幅1mm、ピッチ4mmの矩形フィンを持つフィン付面と平滑面を用いて、LiBr水溶液による吸収実験を行った。伝熱面を下向きにすると、平滑面では、LiBr水溶液の表面張力が大きいために流下液膜が一様な厚さとはならず筋状に流れるが、フィン付面では一様に流下し、傾斜角がかなり水平に近い状態でも流下できることが明らかとなった。そこでフィン付伝熱面について、上向きと下向きの各場合について傾斜角を45°と22°に設定して熱伝達率の比較を行った。その結果、傾斜角が45°の場合には、上向きと下向きでその差は本実験精度では確認できなかったが、液膜が厚くなる傾斜角が22°の場合には、下向きの方が明らかに熱伝達率が大きい結果が得られた。これは液膜内の対流の影響と考えられ、今後、測定精度の向上を図るとともに、現在開発中のシミュレ-ションプログラムを完成させて、下向き伝熱面の効果をより明確にする予定でいる。
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