研究概要 |
本研究は、表面があらくあるいは汚染された熱工学の実在表面の熱ふく射性質を系統的に明らかにすることを目的とするものである。まず,自己相似的な3次元構造をもつあらい表面をモデル化するために,新しい重ね合わせ法のアイディアを提案して,そこでのふく射の回折・干渉現象を調ベ,このモデルが,かなりの鏡面反射性をもって拡散反射的な金属実在表面の反射性質をよく記述することを示した。 ついで、金属のあらい実在表面が熱工学の実環境下で酸化され,表面被膜の成長に応じてその反射性質を次第に変化するふく射性質のダイナミックスに注目し,その過渡挙動を記述する表面・ふく射性質モデルを提案した。数値実験を行い,この方法がさきに実験で明らかにしたふく射性質の過渡挙動をよく記述することを示した。 さらに,粒子散乱現象に注目した。熱工学では大きい粒子の散乱が重要であるが,これらの粒子は理想的な球や円柱ではなく,その表面にふく射の波長のオーダのあらさをもつ。この研究では,上記の研究の手法を応用して,その表面が自己相似的な3次元構造をもつ薄板状粒子を考えて,そのふく射散乱現象を考察した。粒子が大きくなるとともに現象は粒子散乱的から表面散乱的に遷移することを示し,また,その遷移がかなり小さな粒子サイズで起こることを強調した。これらの研究を支援するための実験研究として,2方向反射率測定装置や半球等強度入射半球反射率スペクトル測定装置開発を開発し,これを用いてあらい軟鋼表面などの2方向反射率・半球反射率のスペクトルを測定し,表面のrmsあらさやフラクタル次元がその反射特性に及ぼす影響を系統的に調ベた。
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