研究概要 |
安全で経済性の高い超伝導マグネツットの設計に必要な,超伝導導体の安定限界を正確に予測するために,超臨界圧ヘリウムにより冷却される中空超伝導導体について、導体個体壁内の非定常熱伝導と,流路内における超臨界圧ヘリウムの二次元的過渡熱流動の連立微分方程式および付加条件を記述し、それらの離散化を行った.解析では超伝導導体の局所に熱擾乱を加え,超伝導導体の温度分布,超臨界圧へリウムの圧力,温度および流速分布,導体からヘリウムへの熱流束,クエンチおよび圧力波の伝播速度の時間分布を検討した.熱擾乱は,導体の中央部のある区間の一定時間の一様加熱で,加熱強さと加熱時間により与えた.一方,超伝導導体の安定性に関し,冷媒の初期温度および圧力,初期質量流量,熱擾乱に付加時間,動作電流および導体の長さおよび内径の各因子が超伝導導体の安定性におよぼす影響を検討した.当初,解析では超残界圧ヘリウムおよび導体をもとに流動方向および導体の厚さ方向の2次元モデルとして取り扱ったが,導体に関しては厚さ方向の温度差が小さく無視できることがわかったので導体は簡単な一次元モデルとして取り扱った.超臨界圧ヘリウムの物性値は当方で開発したプログラム(PROPATH)により,予測される圧力および温度範囲について各物性に関し詳しい表を作成し,その表より内挿した.解析の結果以下の事が明らかになった. 1.導体に熱擾乱を加えると,加熱部から圧力波および流速変化が上流側と下流側の両方向へほぼ対称に広がる.2.圧力波および流速変化の伝播速度は導体からヘリウムの熱流束に依存する.3.クエンチの伝播速度は加熱部の上流側と下流側では下流側の方が若干速い.4.動作電流が小さいほど導体の安定限界は高くなる.5.内径が大きい方が安定性が良好である。6.0.3〜0.8[MPa]の範囲で流体の圧力は安定性に大きな影響を与えない.7.加熱長さが長いほど導体の総加熱量としての安定限界は高い.8.加熱時間が長いほど導体の総加熱量としての安定限界は高い.
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