研究概要 |
本年度は下方から加熱され,上方から冷却される水平断熱層を対象とした. 1.二次元対流(ロ-ル対流)の場合を想定し,試験流体としてグリセリンを用い,感温液晶を用いた内部対流パタ-ンの可視化を行った.ヒ-トパイプの封入により水平方向温度分布が一様化され,浮力を減じ,したがって内部対流が抑制され,対流発生の限界レイリ数が上昇することを観察した. 2.圧力容器(内径130mm,高さ200mm)の内部に,層厚さ20mm,辺の長さ60×60mmの多孔質層(直径1.12mmのガラス球を充てん;空隙率は0.38〜0.45の程度)に直径2mmのヒ-トパイプをピッチ3mmで並べて封入し,層内の温度分布の測定と同時に熱伝達特性を実験的に検討した.ヒ-トパイプ封入多孔質層においては封入しない層の限界レイリを越えてなお伝導温度分布が維持され,対流発生が抑制されること,対流発生後の熱伝達も抑制されることを実験的に確認した.なお,ヒ-トピイプ群を1段のスクリ-ンとして封入したが、層内の実験温度分布からは,対流を生じた時の流動パタ-ンはヒ-トパイプの方向に軸をもつ全層規模のロ-ル対流と判断された. 3.陰解法による非定常二次元数値解析の結果は,実験における対流発生の限界レイリ数,熱伝達特性の結果とほぼ一致した.層内流動パタ-ンの実験結果を参照して,三次元解析も併用した.この三次元解析によれば,実験と同様のヒ-トパイプ方向に軸をもつロ-ル対流が発生することが確認された. 4.対流パタ-ンを簡単化し,ヒ-トタイプ位置で温度が規定される場合の解析を行い,対流パタ-ンが局所規模あるいは全層規模対流の形で生じる場合について検討を行った.この近似解析は,実験結果および数値解析結合をほぼ説明できることより,ヒ-トパイプ封入による水平断熱層高性能化の理論的基盤が確認された.
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