研究概要 |
主に,こすれ音から鳴き音への移行過程を実験的,理論的に解明するために,三種類の実験装置を用いた. まず,第一に用いたのは,実際のディスク・ブレ-キをシミュレ-トしたディスクとパッドからなる実験装置である.この装置を用いて,特に,極低速回転において発生する鳴き音について,種々の測定,すなわち,ディスクおよびパッドの振動測定などを行った.その結果,スティック・スリップを伴った鳴き音が発生することがわかった.なお,鳴き音発生時の摩擦係数の変化を測定すべく種々の方式を試みたが,現在まで正確な摩擦係数の測定が可能になっていない.したがって,こすれ音から鳴き音への移行過程を完全に解明するに至っていない.現在,摩擦係数の測定方法の改善を試みている. 次に,温度によって摩擦係数が容易に変化する二つの円筒状のセラミックを面接触させながら摩擦させた.常温から800℃まで温度を変化させると,約200℃で鳴き音が発生し始め,650℃近くで鳴き止むことがわかった.このとき温度に対する摩擦係数の変化と鳴き音発生の関係について調べた結果,摩擦係数が0.6以上にならないと鳴き音は発生しないことがわかった.さらに,鳴き音発生時の瞬間的な摩擦係数を測定することによって,こすれ音から鳴き音への移行過程を究明する予定である. 最後に,自動洗濯機などに用いられているバンドブレ-キの鳴き音の発生機構の究明を行った.バンドとドラムからなる実験装置を用いて,鳴き音を発生させた.この結果,鳴き音の周内数はドラムの回転の増加とともに高くなり,バンドとドラムからなる系の特定の固有振動数に近づくことがわかった.また,特定の周波数の鳴き音が発生する機構を理論的に詳細に明らかにすることができた.
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