研究概要 |
こすれ音から鳴き音への移行過程を解明するために,ディスクとパッドからなる実験装置を用いて移行過程における摩擦係数の変化を測定したが,正確な測定ができなかった。そこで,摩擦係数が測定し易い長いはりと厚い回転円板からなる摩擦実験装置を用いて,摩擦力とはりの先端の振動速度を測定した。摩擦力と相対速度の関係をその移行過程において調ベた。摩擦係数の勾配が負になり始まると,鳴き音が発生する確率は高いことがわかった。また,勾配が負になる要因について,摩擦面の観察を顕微鏡やビデオカメラ等を用いて実験を行ったが,完全に解明できなかった。こすれ音から鳴き音への移行過程における摩擦状態の変化の解明という困解な課題については,今後,さらに綿密な実験を続行する予定である。 二つの円筒状セラミックを高温時に面接触させながら摩擦させたとき発生する鳴き音についても種々の実験を行った。瞬時の摩擦係数測定は不可能であったが,温度が200℃になると鳴き音が発生し,650℃以上で鳴き止む。このとき,摩擦係数が約0.6になると,鳴き音が発生することが種々の実験から明らかになった。 列車の車輪とレールをシミュレートした表面あらさを考慮した円板の摩擦振動の理論的な研究については,表面あらさが正弦波とランダム波であると仮定して,それらが円板に作用したときの鳴き音について検討した。その結果,正弦波入力については,単独あるいは二重モードの鳴き音は発生するがそれ以上の多重モードの鳴き音が発生しないが,ランダム入力の場合には,多重モードの鳴き音が発生することがわかった。 さらに,ディスクブレーキをシミュレートした,はりを回転円板に摩擦させたとき発生する鳴き音について非線形解析を行い,線形計算との違いなどを明らかにすることができた。
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