研究概要 |
近年の科学技術の急速な進歩に伴い、音響環境下における機械や機器システムの問題,すなわち,音響励振を受ける機械構造物や機器の破損に関する安全性や性能維持の問題が重要となってきている.宇宙工学におけるロケット打上げ時や飛翔時の高音響が,人工衛星や搭載機器に及ぼす場合や,これに比べると音響の程度は低いが,VTRなどの音響機器において、駆動モ-タやベアリングから発生する音や振動の複雑な作用により生じる,VTRの性能低下が厳しく問われる場合などは,これら音響環境が機械システムに影響を及ぼす典型的な例である.本研究では,このような音響と機械システムとの連成問題を系統的に解析するため,まず音源より発生する複雑な音場を実験と理論面から解析し、機械システムに作用する音圧や音響インテンシティの音場内分布を明らかにする.次に,そのような音圧による機械システムの応答を理論解析し,実験結果と比較すると共に,音響のアクティブコントロ-ルについての基本的な知見を得る.本研究で得られた主な結果を以下に示す. (1)振動する矩形板により生じる音場や箱型空間内における音場の音圧,および三次元音響インテンシティを測定し,音圧分布および音響エネルギ-流れを明らかにした.また音場設計を効果的に行うため,複数音源によって形成される定常および過渡音場の可視化を行った. (2)音源としてスピ-カを用いた場合の,音響加振によるCDプレ-ヤの応答を解析し,音響励振がプレ-ヤまたは再生音に与える影響を,エラ-信号を用いて調べた.その結果,1kHzまでに3個あるディスクの共振点近傍の音響励振が,再生音の音質にそれぞれ特徴的な影響を及ぼすことを明らかにした. (3)箱型音場内における音場を能動的に制御するため,複素音響インテンシティから得られる音圧と粒子速度の位相差を用いる方法を提案し,その有効性を確かめた.
|