多指ロボットハンドの各指は、個々のリンク要素から構成された多リンク系としてとらえることができる。このように多リンク系において、コンプライアント(柔らかい)関節と位置制御関節を、ある決まったル-ルに基づいて設定して、位置制御関節に適当な指令値を与えると、リンク系は対象物との接触状態を維持したまま、その姿勢を変えることができる。この性質を自己姿勢変形性、またこの性質に関連する一連の動作を自己姿勢変形動作(SelfーPosture Changing Motion:以下SPCMと略記)と定義した。SPCM中の任意の2つのリンク姿勢を選び出すと、両者の間には必ず1個の交点が存在し、この交点がロボットと対象物との近似的な接触点になりうることがわかった。さらに、新たに提案した隣接近似度最小法という考え方を導入すると、リンクの交点として算出する場合に比べて、格段に算出精度が向上させられることがわかった。また、SPCMの基本動作中、リンクと対象物との間の接触力は、一意に定まらないことを解析的に示しとともに、今年度に試作した3関節指モデルを使って、接触力を実験的に測定した結果、SPCM中、接触力は徐々に変化していくのではなく、対象物の幾何学的形状、接触部の摩擦係数によって決まる固有のリンク姿勢まで変形すると、接触力は急激に増加し始める性質があることがわかった。このような性質は従来ほとんど知られておらず、本研究を通じて得られた大きな成果である。
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