研究概要 |
風や地震等の外乱によって高層建物に生じる振動を効果的に抑制するための制振装置とニューラルネットワークを用いた高ロバスト性を有する制御系の基礎的研究を実施した。初年度には総質量974kg、総高さ1,878mmの三層鉄骨造モデルを設計、製作し振動実験を実施した。制振装置としては建物1次固有振動数に同調させたチューンドマスダンパ(TMD)と最適制御理論に基づくアクティブマスダンパ(AMD)を使用した。正弦波加振実験においては、建物1次共振点での応答がTMDを用いた場合、約51%、AMDを用いた場合、約88%低減されることを確認した。また、地震波加振実験においては、その効果は地震波の種類によって異なるものの応答は概ね、TMDの場合30〜40%、AMDの場合50〜60%低減され、本システムが良好な制振性能を有していることを検証した。2年度には実験結果を本に解析モデルを作成、風や地震に体する制振性能を検討した。一方パソコン上にシステム同定のためのシステムニューラルネットワーク(SystemNN)と評価関数を最小とするように制御力を決定するコントロールニューラルネットワーク(ControlNN)から構成されるニューラルネットワークを構築し、検討した。SystemNNでは300通りの場合の学習を行ったが、シグモイド関数の傾きによって精度の変化が認められるものの、他のパラメータに対しては特に傾向が無いとの結論を得た。ControlNNは2次形式評価関数を最小にすべく、カスケード結合された(1つのユニットは1つのSystemNNと1つのControlNNから構成される)ネットワーク内を誤差を逆伝播させ制御電圧を得る構造とした。現在のところ、最適制御則を用いた場合に比べその性能は劣るものの、結合係数初期値を大きめに(1.0程度)、学習係数を小さめに(0.01程度)として、その修正量を徐々に小さくする方向で学習を行うことにより比較的良い結果が得られた。
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