| 研究概要 |
本研究は、リン酸形燃料電池の設計や研究開発に役立つ工学的基礎理論を作る事を目的としている。この理論は、リン酸形燃料電池の材料特性、構造、運転環境をもとに燃料電池内の電圧・電流、温度、及びガス濃度分布を求めるものである。正常な燃料電池の定常状態における特性解析は既に報告しているが、本研究では起動,負荷変動などの非定常状態あるいは欠陥のある燃料電池の特性解析も行えるよう理論の拡張を行うものである。本年度は当初計画通り次のような研究成果を得た。
1.燃料極と空気極にそれぞれ水素と水素,窒素と窒素,空気と空気,水素と窒素,窒素と空気及び水素と空気を供給した場合の電圧・電流特性及び腐食反応による炭酸ガス発生量を測定した(詳細は発表論文参照)。これらは、燃料電池が遭遇する各種環境条件すなわち定常,起動,負荷変動あるいはセル欠陥状態などにおける特性予測を行うための基礎デ-タとして必要不可欠なものである。
2.電気化学反応によって発生する水分を測定する技術を開発し、空気極試験の水分排出特性を明かにした。多くの水分は空気と共に排出されるが、一部の水分はリン酸側へ移動しリン酸中に畜積されることが分かった(詳細は発表論文参照)。平成4年度はこの技術を用いて、セル内で発生する水分が空気極と燃料極に分配されるメカニズムを明かにし、セル内ガス濃度分布の計算精度向上を計る。
3.欠陥セルの例として、セル内局部短絡がある場合とリン酸消失により空気と燃料ガスの混合が生じた場合の特性を調べた(詳細は発表論文参照)。
4.起動過程における燃料電池内の過渡的な特性に関しては、平成3年3月に発表済みである。負荷変動時の過渡的な特性に関しては、平成4年度に実験予定である。
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