本研究の目的は、近年注目をあびてきている遺伝アルゴリズムに関し、 (1)配電損失最小化問題等、電力系統における離散的最適化問題へ遺伝アルゴリズムを適用するための遺伝子構成・適合関数形を開発し、遺伝アルゴリズムによる配電損失最小化問題の解法を確立する、 (2)大規模問題の解の精度を向上するため、単純遺伝アルゴリズムに改良を加え、大規模配電損失最小化問題へも適用可能とすることであった。 上記目的に対し、本研究の成果は以下の(1)〜(5)のようにまとめられる。「(1)配電損失最小化問題の単純遺伝アルゴリズムによる解法を確立した。」その結果をシミュレーテッドアニーリング(SA)法によるものと比較した結果、「(2)ストリング長が短ければ、少ない(SA法の1/6)演算時間でほぼ最適な解が得られる」ことが判明した。さらに、ストリング長が長い大規模問題においてもSA法と同等の解を得るために、ストリング構成、適合関数形、交叉率、突然変異率、交叉点数、交叉方法、初期ストリングパターン、適合関数値の分布等の人工的操作に関し、これらが結果に与える影響について調査した。その結果、「(3)交叉率、 突然変異率は問題によって最適値がある。一般に、交叉率0.6〜08、突然変異率は1〜2ストリングに1ビット程度が良い。」「(4)大規模問題では、初期ストリングにあらかじめ良いスキーマが組み込まれていれば良い結果が得られる。」「(5)他の人工的操作は、それら単独でもまたは組み合わせによっても結果にほとんど影響を与えない。」などが判明した。 以上のように、配電損失最小化問題への遺伝アルゴリズムの適用方法を確立し、さらに、大規模問題に対しても精度良い解を得るための条件を導き出すことができて初期の目的を達成した。 以上の研究成果は、裏面に示すような論文として公表されている。
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