現在のロボットはマイクロプロセッサと制御技術の発達が相俟って非常に高性能な動作が実現できるようになってきているが、それ自身の持つ運動の自由度が少ないために機構上の問題から微妙な動作が実現できない。しかし、今後の知能ロボットでは、器用で柔軟な動作が期待されており、その基礎研究が急務である。このようなモデルとして、人間の筋肉あるいは軟体動物などの組織機構があり、本研究ではその実現に対する提言を行っている。このような極めて多数のアクチュエ-タからなる多変数系では自律分散制御を基本としなければならない。エネルギ-の分散を最小に抑えるため、非線形ポテンシャルによる力伝達が有用であり、新たに開発した遅れ重畳法と組み合わせることにより少ないビット数で高精度な力制御が行えることを実際に計算機シミュレ-ションで確認した。また、シリコンゴムと櫛形電極を組み合わせたマイクロアクチュエ-タの単体を試作し、電圧を印加することにより実働することを確認した。まだ、このアクチュエ-タを組織化するまでには至っていないが、人工筋肉実現の基礎は出来つつあるといってよい。特にこれら多数のアクチュエ-タを組み合わせた場合にはキネマティクスが確立していないと制御入力が計算できなくなる。この方法論も現在開発中である。ダイナミクスについては環境からの反作用と伝達される入力を区別するロバスト制御の確立が重要である。平成3年度の研究から、そのような制御においては加速度制御が最も有効であることが明らかになった。この場合、力ソリトン波をどう制御するかが明確になっていなければならず質量、可操作性との関連を明確にする必要があると考えている。今後はこのような非線形ポテンシャルを持つアクチュ-タをネットワ-クに組んだときの特性を検討し、基礎性能を明確にする必要があろう。
|