本研究は、電気機器設計に対する応用を前提とした、三次元電磁界の有力な解析手法の開発を目的としている。具体的には、今まで長期にわたり担当者が研究開発してきた有限要素法と境界要素法の併用手法の、三次元化と渦電流問題への拡張を目指している。三次元解析では未知数の個数が急増するため、計算機容量の制限から要素分割数を極端に減らさざるを得ないのが現状である。従って解析精度を落とすことなく、未知数の個数を減らす工夫が必要となる。広大な空気領域を境界法である境界要素法で定式化する有限要素・境界要素併用法は、未知数の少なさの点で大変有利である。この併用法の長所を更にのばす目的で、磁界の強さHと磁気スカラ-ポテンシャルφを考察物理量とするHーφ法を我々は提案している。このHーφ併用法を用いて解析を行うにあたり、考察対象領域の特性に応じて有限要素法、境界要素法の何れを採用するのか、また変数としてH、φのどちらを選ぶのかを決める必要があり、この決定法には幾つかのバリエ-ションが考えられる。本年度はこのHーφ法の定式化における基礎的な理論の確立に重点を置いた。まず未知数減少を最優先としたスカラ-ポテンシャルφを極力多用する定式化に成功し、電気学会より提案されている三次元渦電流場検証モデルの解析を行った結果、その有効性を確認できた。次に有限要素法領域と境界要素法領域の接合に有利な辺要素を導入した定式化に成功し、同検証モデルの解析を行い、高精度な計算結果を得た。現在、最終的に求めたい物理量である渦電流と磁束密度を始めから未知数として採用する定式化を検討中である。また、このような基礎理論の開発と並行して、三次元電磁界解析の実機への応用(磁気浮上システムにおける永久磁石の特性解析)も行った。次年度は更に実機(角筒型リニア誘導機など)の解析を行っていく予定である。以上、本年度は予定通り研究を進めることができた。
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