変圧器油中の電気伝導と破壊に関する研究: 針ー平板、又は刃ー平板電極系に負の直流高電圧を印加した場合に、ある電圧値で電流急増が起こる。この急増点における電圧値から導出された電界強度とショットキー放出理論の両者から陰極の仕事関数が算出された。金属と液体との接触によって、仕事関数は見掛け上低下する。更に電子放出面積が大なる程、仕事関数は小となる事が分かった。一方、空間電荷制限領域での電流Iと電圧Vの関係は、針ー平板系においてV∝I^<1/2>、及び刃ー平板系においてV∝I^<1/3>となるが、いずれの線形関係もある電圧値以上でその傾きが変化する。この理由が液体流動に起因することを解析的に示した。すなわち、傾きの変化は乱作用にによる。これは、コルムゴロフの乱流理論から説明できた。 液体窒素中の伝導と破壊に関する研究: 液体窒素中に針ー平板電極系を設置し、針電極に直流高電圧を印加した場合の破壊前駆電流が測定された。破壊前、数十μsの間に電流は急激に上昇するが、それらの電流波形には印加電圧による著しい極性効果の存在が認められた。すなわち、負針の場合には、破壊前、数μsの間に電流休止時間が存在することである。更に、前駆電流に及ぼす圧力の効果が研究され、圧力の上昇と共にストリーマの進展速度が上昇することが分かった。これらは、気泡形成の解析から説明することができた。今後は、液体窒素と固体絶縁物の複合系について更に研究を進める予定としている。
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