変圧器油中の電気伝導と破壊現象:これまでは主として、電気伝導とそれに伴う流動現象(EHD流動)についての測定を行い、新しい知見を得てきた。最終年度は特に、伝導領域から破壊領域への不連続的移行のメカニズムについて研究し、次の知見を得た。伝導特性において、印加電圧のある臨界値で電流は急増するが、これは、鋭利電極の先端から生ずるホモ電荷の発生によることが、流動の測定とダスト図法から明確にされた。更に、正極性破壊現象の場合について、破壊付近の電圧印加の下で、平板表面の電界が極めて上昇することがわかった。これは流動を伴うギャップ間の電界に及ぼす空間電荷効果による。この電界上昇によって、平板表面に負電荷が発生する可能性を見い出した。この負電荷は正極性破壊のメカニズムに重要な役割を演ずる。すなわち、正極性破壊の発端機構の一考察として、平板表面で発生した負電荷が、流動とクーロン力の作用によって鋭利電極先端へ流され、先端電界に及ぼす空間電荷効果を緩和するため、先端電界が上昇し、そこで発生したストリーマを急速に成長させることになる。これが破壊の原因となるものと結論された。 液体窒素中の電気伝導と破壊現象:この研究では、主として破壊前、数十musの間の電流変化を測定し、伝導と破壊の関連について、既にいくつかの知見を得てきた。最終年度では、液体窒素中の電極系に氷が付着した場合の破壊前駆電流を測定した。ストリーマの進展速度に関して、氷中と液体中との間の明確な差を電流波形の測定から見いだした。更に、絶縁破壊電圧の測定を行い、液体窒素温度における氷は、良好な絶縁体と見なせる事を示した。液体と個体の複合絶縁系については更に研究を進める予定としている。
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