本研究では、当初スルホン化フェノキシ基を有するポリホスファゼン共重合体を得ることを狙いとしたが、数カ月の合成化学的検討の結果、それがスルホン基導入が困難であることを認め、代替の手段としてこれをpーメチルフェノキシ基に変えて研究を行った。 置換比率の異なるポリ[(トリフルオロエトキシ)(pーメチルフェノキシ)ホスファゼン]共重合体を7種類合成し、その化学組成を元素分析と赤外吸収スペクトルにより調べた。また、それらの重合度と重合度分布をGPCにより検討して、目的とするポリホスファゼン共重合体が得られたことを確認した。これらの試料について、DSCによる熱解析を行ない、組成に依存するガラス転移点変化はゴ-ドン・テイラ-式により表わされることを見い出した。トリフルオロエトキシ基、またはpメチルフェノキシ基が偏って多い共重合体には、それぞれのホモポリマ-に対応した結晶相/メソ相相転移が観察され、それらの格子面間隔は既住の研究結果に良く一致した。一方、置換比率が5:5前後で得られた共重合体は、非晶性を示して結晶相/メソ相相転移が存在しないことを認め、溶媒への溶解性も良好であった。この事は、希薄溶液化し薄膜塗布をする際、膜の均一性を確保するために重要である。 合成された共重合体をスピン・コ-タ-によりシリコン基盤上に薄膜塗布し、その表面状態を走査型電子顕微鏡により詳しく調べた。薄膜の濡れ性に関しては、種々の極性溶媒と非極性溶媒を用いて接触角を測定し、濡れの部分面積を求めた。トリフルオロエトキシ基の多い共重合体は予想通り極性溶媒への濡れ性が低く、金属に対する摩擦係数が低下することを認めた。金属面には、-p=N-基が配向吸着していると推測する。次年度は、置換基をすべてフルオロアルコ-ル化したポリホスファゼンについても上記同様の検討を進め、良好な潤滑材料の開発を行う。
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