研究概要 |
昨年度は、リン原子への置換基がp‐メチルフェノキシ基(予想吸着基)とトリフルオロエトキシ基(潤滑活性基)を併せ持つ共重合体(F‐P系列)を得て、その界面特性についての研究を行った。今年度は、p‐メチルフェノキシ基の代わりに3,4‐ジメチルフェノキシ基をリン原子へ導入し置換比率の異なるポリ[(トリフルオロエトキシ)(3,4‐ジメチルフェノキシ)ホスファゼン]共重合体(F‐dM系列)を4種類合成し、それらのバルク特性と界面物性の検討を行う。 トリフルオロエトキシ基が偏って多く存在するF‐dM系列共重合体には、それぞれのホモポリマーに対応した結晶相/メソ相相転移が観察された。関連した研究において、ホモポリマーであるポリ[ビス(3,4‐ジメチルフェノキシ)ホスファゼン]の結晶格子定数を電子線回折により決定し、同時にX線回折による結晶構造解析を進めた。これは、F‐dM系列共重合体薄膜内の分子鎖コンホメーションを推定するために行った。 一方、置換比率が5:5前後で得られたF‐dM系列共重合体は、殆ど非晶性を示して結晶相/メソ相相転移が存在せず、顕著なガラス転移のみを認めた。加えて、F‐P系列に比べF‐dM系列共重合体は、有機溶媒への溶解性も良好であった。この事は、後者のガラス転移点が約40℃も低く、共重合体分子鎖間凝集エネルギーが小さいためと考察した。 非晶性F‐dM系列共重合体をスピン・コーターによりシリコン基盤上に薄膜塗布し、得られた薄膜表面の接触角を極性溶媒と非極性溶媒を用いて測定して、濡れの部分面積を求めた。F‐P系列と同じくトリフルオロエトキシ基の多いF‐dM系列共重合体は予想通り極性溶媒への濡れ性が低くなったが、F‐P系列よりも効果は少なかった。塗布時において、金属面に対し‐P=N‐基の選択配向吸着が予想されたので、反射赤外吸収スペクトル法によりこれを確認する実験を継続中である。
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