研究概要 |
連続型磁気記録媒体に有効な潤滑材料として、リン原子への置換基が金属または金属酸化物に対し強い親和性をもつアンカー基と潤滑性を有する官能基を併せもつポリホスファゼン共重合体の研究を行った。具体的には、p-メチルフェノキシ基(予想アンカー基)とトリフルオロエトキシ基(潤滑活性基)を併せ持つ共重合体(F-P系列)の合成、並びにアンカー基を3,4-ジメチルフェノキシ基としたポリ[(トリフルオロエトキシ)(3,4-ジメチルフェノキシ)ホスファゼン]共重合体(F-dM系列)を合成し、それらのバルク特性と界面物性につき検討した。 トリフルオロエトキシ基が偏って多く存在する共重合体には、F-P系列とF-dM系列のいずれにおいてもそれぞれのホモポリマーに対応した結晶相/メソ相相転移が観察された。関連した研究において、ホモポリマーであるポリ[ビス(4-メチルフェノキシ)ホスファゼン]と、ポリ[ビス(3,4-ジメチルフェノキシ)ホスファゼン]の結晶構造解析を進めた。これは、両系列共重合体潤滑薄膜内の分子鎖コンホメーションを推定するために実施された。一方、置換比率が5:5前後で得られたF-P系列とF-dM系列共重合体においては、殆ど非晶化していることがX線回折により確認され、ポリホスファゼンに特有の結晶相/メソ相相転移が存在せず、顕著なガラス転移のみを認めた。 得られた共重合体をスピン・コーターによりシリコン基盤上に薄膜塗布し、その薄膜表面の接触角を極性溶媒と非極性溶媒を用いて測定して濡れの部分面積を求めた。トリフルオロエトキシ基の多い共重合体は予想通り極性溶媒への濡れ性が低くなったが、F-P系列よりもF-dM系列における効果は少なかった。薄膜塗布時において、金属面に対し-P=N-基の選択配向吸着が予想されたので、反射赤外吸収スペクトル法によりこれを確認する実験を継続中である。
|