初めに、弗化物表面の改質状態における光反射率の入射角依存性、表面改質層の有無及びその光学定数依存性、入射光の偏向依存性についてモデル計算を行った。Si基板上の弗化物は透明薄膜であるため、大気(真空)/改質吸着層/弗化物/Siの4層構造における多重反射を考慮した反射率変化の計算を行った。 反射率の計算より、弗化物表面改質層の形成による反射率の変化は、P偏光を用いてその入射角を大気/弗化物界面および弗化物/Si基板界面のブル-スタ-角にすることにより、弗化物およびSi基板からの反射をなくし検出感度よく測定できることが理論的に分かった。 次に、測定光学系を作製し、表面吸着物質がある系とない系の反射率を大気中で測定し、反射率変化を求めた。MBE装置で作製したSi(111)基板上のCaF_2を用い、As雰囲気中で試料の一部に電子線を照射して、一部Asで表面改質をおこないその改質領域と未改質領域の間で反射率の変化を比較した。測定光には可視光(波長500nm)を用い、反射率変化の入射角依存性の測定を行った。入射角をCaF_2/Si基板界面のブル-スタ-角付近にすることにより、約10%の大きな反射率変化を得ることができた。この結果より、Si基板からの反射光を低減し、表面のAs化合物からの反射光を効率よく観測できることが明らかになった。 現在、この表面観察法を電子線照射による表面改質のその場観察に適用するために、ベルジャ-型真空チェンバ-に測定光を導入するための光学系を作製中であり、まもなく電子線照射による表面改質の新たな知見が得られ始める段階である。
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