撮像デバイスの高感度化は、高解像度化とならんで撮像デバイス誕生以来の不変の課題あるといえる.今日では、見えないものはないように思えるが、人間の目と同じくらい高い解像度をもつ小型で性能のよい固体撮像デバイスはまだできていない.そこで高解像度化と両立できる高感度技術の開発が要求されている.この問題を基本的に解決するために、a)開口率を100%にするデバイス構成、b)光電変換された信号の画素内増幅技術、c)量子効率1の限界を打破できる新しい光電交換プロセスの三つの技術課題を検討した。 得られた主な成果は、1)a-Si:Hフォトダイオード膜をMOSFET走査IC上に積層した積層増幅型撮像素子を試作し、100%の開口率を実現した.さらに、積層膜は連続膜であるため画素寸法の制約はなく、画素の高密度化と両立できる有効なデバイス構成であることを示した.2)アバランシェ増幅膜を光電変換部にした新しい撮像デバイス構成を提案し、100倍以上の増幅利得が得られることを確認した.これにより実効的な量子効率が1を越す撮像デバイス実現の見通しを得た.3)光吸収領域と高電界領域とを分離したa-Si:Hフォトダイオード膜の構成を提案し、アバランシェ増倍による電流増幅を確認した.また、高電界側の電極からのホール注入を抑制するブロッキング構造に窒化シリコン薄膜が有効であることを明らかにした.さらに、a-Si:H/a-SiC:H超格子膜を設計・試作し、量子効率が1を越す高い光電変換効率を得た.4)縁状の電子放出領域を持つ電界放出微小カソードアレイを設計・試作し、40μA/素子の電子放出を観測した.この値は同一プロセスで作られたコーン型のカソードで得られる電流より大きく、縁型微小カソードアレイは高解像度撮像デバイスの電荷読み取りカソードに最適な構造であることを明らかにした.
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