クラスタ-イオンビ-ムと物質との相互作用に関する研究はここ数年注目を浴びている分野のひとつであるが計算機シミュレ-ションによる解析が進み、面白い結果が報告されている。本研究において開発した2体衝突近似の枠組で時間発展的にカスケ-ドを追跡するDYACATコ-ド(非晶系)やDYACOCT(結晶系)は、従来の分子動力学的手法に較べて、よりサイズの大きいクラスタ-をまたより高エネルギ-の入射イオンを取り扱える長所のある事が判明した。また、平成3年度は分子クラスタ-、例えば(D_2O)nクラスタ-にも適用できるように改良した。クラスタ-衝撃核融合の可能性を検討するため(D_2O)クラスタ-をTiD標的に照射した場合を想定したシミュレ-ションを行い、そのエネルギ-分布を計算した。その結果、衝撃領域は準平衝状態になっている事が判明したが、測定された収量を探る程温度は上がらない事が判った。この結果は平成4年春の物理学会で発表の予定。 また、クラスタ-原子が標的原子より重い場合は先行原子が標的原子であり、露払い効果が非常に大きく、例えば、500個の銀クラスタ-をアルミニュムに照射するとその飛程が単原子照射の飛程の4倍以上にもなる事が判明した。その結果はphys Rev.Lett.に投稿した。また、クラスタ-衝撃に伴う加速効果を評価するため、種々のクラスタ-原子を標的原子の組み合せに対して計算し、フェルミ・シャトルモデルを用いた解析と比較検討することにより、その加速機構を明らかにした。その結果はNucl.Instv.methods Bに投稿した。
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