研究概要 |
高精細画像信号においては,解像度の低い従来の画像信号の場合と比べて,より高いビットレートかつ高品質な領域での符号化効率の良さが求められる.このような条件のもとで、効率の良い可変密度標本化を実現するためには、標本化によって生じる空間的なひずみと量子化によって生じる振幅的なひずみとのトレードオフを定量的に評価することのできる画質評価尺度が必要となる。本年度の成果を以下にまとめて述べる.(1)平成4年度においては、平成3年度の検討結果を踏まえて、SN比と標本化比率、SN比と量子化ビット数、およびこれらの相互関係を詳細に検討した。その結果、静止画像の場合、比較的SN比の高い領域においては量子化によるひずみと標本化によるひずみの総和を最小化する符号化手法が有効であることが明らかとなった。(2)前記(1)の検討結果を取り入れて、符号化アルゴリズムを改良した。本手法においては、標本化比率は画像信号の局所的な性質に追従させて適応的に制御されるが、これと合わせて量子化ビット数の適応制御についても検討した。この場合、量子化ビット数を直接制御する方法と、固定の量子化ビット数を用いて量子化器出力を可変長符号化する方法を検討したが、後者の方が制御も容易であり、より優れた特性を示すことが明かとなった。また、圧伸モデルに基づく汎用的なベクトル量子化器の設計手法を開発した。これについては、電子情報通信学会論文誌(平成4年3月号)に掲載予定である。さらに、シミュレーション実験を効率よく遂行するための検討を行う過程で、ベクトル量子化の高速アルゴリズムを開発した。これにより、符号化および設計のための計算時間が10倍以上以上高速化された。(3)主観評価実験については、未だ十分な結果が得られていないため、継続した検討の予定である。
|