研究概要 |
可変密度の標本化を行うシステムにおいては,標本化によって生じる空間的なひずみと量子化によって生じる振幅的なひずみの間のトレード・オフをどのように調整するかが方式設計上の大きな問題となる.また,本方式のように,適応的な標本化を伴う再帰的な符号化ループの中に量子化器が組み込まれている場合,量子化器の特性が標本化の特性に大きく影響を及ぼすという方式設計上の問題がある.これらの問題を解決するため,本研究では圧伸モデルに基づくベクトル量子化器の設計手法を開発した.同手法においては,圧伸モデルに基づいて生成した試験情報源に対して,一般化Lloyd-Max手法を適用することによって,汎用的な圧伸ベクトル量子化器が設計される.また,このようにして設計されたベクトル量子化器を再帰的ベクトル量子化方式に適用しその有効性を示した.高精細画像信号においては,符号化処理の対象となるデータが膨大となるため,計算効率の良い符号化アルゴリズムが必要となる.さらに,ベクトル量子化部分の処理時間が全体の符号化処理時間に大きな影響を及ぼすため,高速の符号化アルゴリズムの開発が実用上重要である.このような観点から,拡張された部分ひずみ探索に基づくベクトル量子化の高速符号化アルゴリズムを開発した.これにより,符号化および設計のための計算時間が,全探索手法に比べて20倍以上高速化された.現在,さらに高速な符号化アルゴリズムの実現を目指して,前置量子化器を用いた2段階最近傍探索手法の開発を進めており,理論の整備を終え,シミュレーション実験の段階に入っている.
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