本年度は光ニューラルネットワークを用いた色彩認識システムの実証として、2種類の光ニューラルネットワークを用いたシステムを実現した。一つは人間の色覚に対するRGBの3刺激による表色系の概念に基づいたシステムである。He-Cd白色光レーザをこの3刺激の光源として用い、平成3年度の成果として得られた半導体レーザと光ダイオードを組み合わせて構成する光双安定素子の出力を光シグモイド関数として用いることにより、シミュレーションと実験の両面から比較的少ない学習パターンで多くの色彩を認識することが可能な実用的な色彩認識システムを構成できることがわかった。もう一つは生物の視覚系を模倣したシステムである。最近比較的安価に市販されるようになった高精彩度TFTカラー液晶を色フィルタとして用い、光源には色相の変調が容易なカラー液晶プロジェクタを用いて、中間層に上述の光シグモイド関数の働きをする双安定素子を使用した。この結果、7つの疑似色細胞ユニットを構成することにより、これら7個のユニットそれぞれが、従来サル等の動物の生体について報告されている視覚系の色細胞と同様の挙動を呈し、このシステム全体として神経節細胞とよく似た働きを示すことを確認した。本システムをさらに発展させて研究することにより、生物の視覚メカニズム解明の支援や、人間の色覚により近い色彩認識をコンピュータに行わせることなどが可能と思われる。本年度の研究成果は、1992年度電子情報通信学会光・量子エレクトロニクス研究会で報告し、また同学会論文誌に投稿中である。
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