研究概要 |
1. ネコ大脳皮質視覚野スライス標本を用い,2・3層を電気刺激し5層ニュ-ロンから細胞内記録を行ったところ,5層ニュ-ロンから 振幅8〜15mV 潜時2.5msec 持続時間10〜100msecの興奮性シナプス後電位(EPSP)が記録された。全ての細胞でこのEPSPは速い上昇相(1.5〜4V/sec)を有したが,これら細胞中には下降相に第二のピ-クを持つものが見られた。 2. 2・3層の電気刺激に興奮性に反応する5層ニュ-ロン細胞体周囲へ圧入装置によりグルタミン酸及びNメチルアスパラギン酸(NMDA)を局所微量投与したところ細胞は強く興奮し、低濃度カルシウム・高濃度マグネシウム溶液下でもこの反応は観察された。またNMDAに対する反応はNMDA型受容体特異的拮抗薬(APV)により完全に抑制された。 3. 1.におけるEPSPは興奮性アミノ酸受容体非特異的拮抗薬(キヌレン酸)の潅流液中投与で強く抑制された。APVの潅流液投与はこのEPSPの持続時間を30%程度減少させたが,マグネシウム非存在溶液中ではこの振幅は強く増大した。 以上の結果から視覚野5層ニュ-ロンは興奮性アミノ酸受容体(NMDAを含む)を有し,2・3層からの興奮性入力はこれら受容体を介することが示唆されるが,今後はこの受容体のサブタイプである非NMDA型受容体とNMDA型受容体が各々この入力へどのように関与しているか,非NMDA型受容体特異的拮抗薬CNQXを使用して調査する予定である。またこの入力を送る2・3層ニュ-ロンの所在範囲や5層ニュ-ロン上でのシナプス入力部位についても調査を計画している。
|