研究概要 |
本年度は,合成音声の了解性の評価法のガイドラインを作成するための研究を中心に実施した。研究実施計画に記載した内容に添って記す。 1.合成音声の品質評価法の枠組みについて,知覚過程との整合性という観点から調査検討した。その結果、(ア)了解性,(イ)自然性,(ウ)利用条件(利用目的・利用者・利用環境)との適合性、の3つの評価項目が必要であること,(ア)については連音節評価試験・単語了解度試験が重要であること,(イ)については音声学的特徴の実現の度合を評価する必要があること,(ウ)については利用環境・利用目的との適合性が特に重要であること,などを明らかにした。 2.合成音声の了解性の評価法の標準的方法を確立するための実験的検討を行い,以下の点を明らかにした。(1)合成音声の了解性を評価するための基本的試験法として,従来単音節明瞭度試験法が広く用いられるが,この試験結果は文了解度を必ずしも反映しない。2連音節明瞭度試験における2音節目の子音の了解性が文了解度とよく対応していることを考慮し,2音節明瞭度試験法が標準的方法として妥当である。(2)単語の了解性を評価するためには,孤立単語として呈示する従来の方法よりは,合文法無意味文として呈示して測定した単語了解度の方が,文了解度との対応がよいので,合文法無意味文による単語了解度試験方を標準的方法とすべきである。また,その試験法においては2回呈示による確認作業を導入することによって,判断が安定する。 3.合成音声の声質が,利用目的・利用環境との関係において,非常に重要であることが分かった。特に長時間利用/短時間利用で,合成音声の平均ピッチは変えられる方がよいこと,騒音環境/静かな部屋に応じて,合成音声の調波成分の高域エネルギ-が変えられる必要があること,が明らかになった。
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