1.Lisp言語を核としたオブジェクト指向の画像処理システムを構築した。このシステムでは、画像などの大量の数値データを効率良く処理するためにレコードアレイ型という新しいデーータ構造を導入した。また、言語的概念を処理するために、形態素解析にCKY法を、構文解析にチャート法を用いた日本語解析システムを新たに追加した。そして、単純な幾何図形の画像からその図形の持つ属性を獲得するシステムを開発した。 2.言語的、数値的、幾何学的に表される画像や対象物に関する知識を推論システムを備えたモデルとしてオブジェクト指向に基づいて抽象化モデルクラスとして定義することで知識の統合を計る表現法を検討した。そしてこの表現法の有効性を確認するために、言語的拘束条件モデル化法と幾何学的モデル化法を抽象化されたモデルクラスとして定義し、各モデル化法で必要な推論部をメソッドによって実現した。 3.画像と3次元モデルとのマッチング法として、本システムでは遺伝的アルゴリズムによる方法を導入した。実験の結果、遺伝的アルゴリズムによるパターンマッチングは、他のモデルからの情報を効果的に利用することができ、3次元物体の見え方を推論する有効な方法であることが明らかとなった。 4.物体認識や画像理解などの特定の問題に対しては、対象物のクラスをシステムに定義された抽象化モデルクラスをスーパクラスとして定義するだけで必要な情報やメソッドを全て継承することができるため、問題毎に画像処理や推論のための処理の作成が不要となった。即ち、特定の対象物のクラス定義を行なう時点で必要なモデルの統合を自動的に行なうことが可能となった。
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