研究概要 |
本研究では,SAWデバイスの高周波化,低損失化,超小型化などの要請に対応できる機能性の高い解析設計支援システムを開発するとともに,SAWデバイスの高性能化実現のために必要な方策について種々検討し,SAWデバイスの設計に役立て得る基礎資料を提供することを目的として研究を進め,本年度は下記の成果を得た. 1.前年度までに,SAWデバイスの基本構成要素であるSAWグレーティングやSAWすだれ状電極(Interdigital Transducer,IDT)の解析法を開発した.本年度は,これらの基本構成要素を組み合わせた形で構成される各種のSAWデバイス,具体的には共振器,フィルタ,発振器といったSAWデバイスの特性を評価するための伝達散乱行列法を開発し,前年度までに開発した解析法の有効利用が可能となった. 2.SAWデバイスの温度特性を改善する一つの方法として,基板の上に基板と反対符号の温度特性をもつ薄膜を装荷するタイプのものがある.ここでは,前年度までに開発した解析法をこのような層状構造のSAWデバイスにも適用できるように拡張した.さらに,SAWグレーティングに斜入射する場合の反射特性を評価することが可能な解析法の開発にも成功した.これによって,SAWデバイスの横モードスプリアス共振を抑圧するための指針が得られるようになった. 3.SAWデバイス解析設計支援システムに搭載する各種パラメータを具体的に求め,これらをデータベース化した.実用的に重要な基板を対象として,電極にアルミニウムを用いた場合の電極膜厚ならびに電極幅に対するモード結合方程式中の結合係数,変換係数,静電容量といった情報をすべてデータベース化した.
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