世界的な通信の自由化、パーソナル化にともない、無線端末機に対する小型軽量化の要求は、車載形からポータブル形へと一段と厳しいものになってきている。このため、こうした小型軽量化実現のための基礎技術の研究開発が活発化しているが、とりわけキーデバイスでもある弾性表面波(SAW)デバイスは量産性に優れ、無線端末機の小型化にも大きく寄与するものと期待されている。本研究では、SAWデバイスの高周波化、低損失化、超小型化などの要請に対応できる機能性の高い解析設計支援システムを開発するとともに、SAWデバイスの高性能化実現のために必要な方策について種々検討し、SAWデバイスの設計に役立て得る基礎資料を提供することを目的として研究を進め、下記の成果を得た。 1.本解析設計支援システムの中核をなす解析ツールとして、モード結合理論を採用し、モード結合方程式中の自己結合係数、モード間結合係数、変換係数、および静電容量といった各種パラメータを有限要素法を用いてすべて理論的に決定する方法を開発した。 2.上記の方法を用いて、SAWすだれ状電極(Interdigital Trans-ducer、IDT)、具体的には、通常のシングル電極IDT、電極間反射を抑圧するためのダブル電極IDT、さらに挿入損失を低減するための一方向性IDTの励振特性を評価し、実験値との比較から、解析方法の妥当性を確認した。 3.移動通信用SAWデバイスの開発に必要な種々の設計パラメータを具体的に求め、これらをデータベース化して本解析設計支援システムに搭載するための基礎資料を得た。
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