研究概要 |
現在までに得られた成果をもとに、植込み型除細動器における個人の特性に応じた不整脈検出方法の開発を目的に、心電図に関する実時間信号処理プログラムの開発と回路の植込み実験を行った。具体的には、1.不整脈認識法の開発 今回は、動物実験により心筋虚血後の心房細動,心室頻脈さらに心室細動へと移行する不整脈の状態を最大6時間に渡りマイクロコンピュ-タに記憶させ、それらの時間的な関係から細動発生の予測あるいは判別を行うプログラムの開発を32ビットコンピュ-タを用いて行った。開発に必要な臨床デ-タは共同研究を行っているカナダ・トロント大学から受取り、不整脈の状況を判定するためのパラメ-タの設定を行うことができた。その結果、心電図の周波数パタ-ンを利用することにより、従来の確率密度関数を用いた方法に比較しより確実に頻脈と細動の弁別が可能であることが確認された。次に、以上の経過をまとめ、今年度アメリカで開催されたIEEE生体工学国際会議において発表した。会議の席上では、実際に除細動器を販売している会社のエンジニアからも質問を受け、今後同一の心電図デ-タを用いて不整脈認識に関するお互いの検出法について比較研究を進め、改良を加えていくこととなった。 2.植込み型除細動器の作製 不整脈認識プログラムを含む検出回路と除細動電圧出力部を組合わせた植込み型除細動器を作製した。特に、信号処理プログラムを内蔵した植込み型装置を作製し、実際に雑種成犬を用いた慢性実験を行った。その結果、最長3週間の植込み実験において包埋材料,装置と電極の接続および回路全体の低消費電力化法について、全体の形状と水洩れの関係および電池消耗度の確認方法等に関する新たな知見を得ることができた。今後さらに総合的な植込み実験を行うために、刺激装置部分の小型化と全体のシ-リングを行う予定である。
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