研究概要 |
本研究で対象とするaーSi系光検出器は、透明導電膜付ガラス基板上にシラン(SiH_4),メタン(CH_4),エチレン(C_2H_4)、アンモニア(NH_3)などの原料ガスと不純物ガス(PH_3,B_2H_6)の混合ガスより、多室プラズマCVD法によってPaーSiC/i(光電流活性層)/n微結晶Siの各層を順次形成することで作製される。本年度は光電流増倍機構の解明を目指して、素子構造と動作条件の両面から系続的実験を行なった。その内容は以下に示したようである。 1)素子構造依存性:光電変換層としてaーSi(ギャップ1.8ev)/aーSiN(ギャップ2.4ev)/aーSiとも光伝導aーSi層中の、さまざまな位置に広いギャップを有する薄いバリア層(50〜500Å)を挿入したヘテロ構造素子において、光電流増倍特性を観測した。その結果、増倍率がaーSiN/aーSi側での光キャリア生成率と強い相関があることが判明した。このことは、aーSiN/aーSi界面への正孔電荷畜積が,電流増幅のための必要条件であることを示唆している。 2)光電流応答:パルス光照射のもとでの光電流の立上り特性を,10ns〜1sといった広い時間領域で測定した。光電流応答波形は,極めて速い時間(〜100ns)および照射光強度に依存した1ms以上の時間領域に,2段階の立上りを示すことが分った。なお,第2の立上りが定常状態で観測される光電流値を与えている。これらの実験事実は、光電流増倍機構が(i)aーSiN/aーSi界面への正孔電荷畜積、(ii)正孔電荷による電場分布の再編成、(iii)aーSiNドリア層中の電場増大、から構成されていることを物語っている。 3)光電流増倍機構の検討:上記の実験結果を総合して、観測された光電流増倍は、aーSi/aーSiN/aーSi構造におけるバンド間トンネリング効果に基づく、いわば内部キャリア注入機構によるものと推察される。詳細な機構解明とデバイス最適化は次年度の主要課題である。
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