研究概要 |
本研究では,感光磁性半導体PMS(Photo Magnetic Semiconductor)の作製と基礎特性について検討し,PMSの工学的有用性を考察した.従来の受光素子は,半導体の電気的特性を利用したものであるが,PMSは磁性半導体の磁気特性の焦性効果を利用した光磁気変換素子である.PMSの作製について,最初,フェライトとルテニウム化合物の混合物をスクリ-ン印刷して硬化させ,放射吸収物質を塗布する方法を検討したところ,十分な感光特性を得ることができた.光信号読み出しは磁気ヘッド法を採用した.この方法は,PMSの上に磁気ヘッドを設置し,下部の磁界発生器より磁束を発生させ,PMSを通過する磁束を磁気へッドで読み出すものである.PMSが光を吸収すると,そのエネルギ-を吸収して,素子温度を上昇させるので,PMSのレラクタンスが増加し,磁束が減少し,磁気ヘッドの変換電圧が低下する.したがって,照射光の強度を電圧で検出することができる.本方法は,PMSに巻線を施す必要がなく,センサの小型化,IC化に有利である. 次いで,感光材料にフェライトのみを使用したスプレイ印刷法を考察した.本方法は,磁性半導体溶液をスプレイガンに充填して高圧空気で基板に吹き付ける方法である.磁性半導体はスプレイガンノズルからミストとなって噴出し,瞬時に基板に付着して磁性半導体膜を形成する.この方法によれば,溶液濃度,空気圧,噴射距離などを調整することにより,膜厚を任意に調整することが可能である.したがって,スクリ-ン印刷法に比べて,作製が容易であり,費用が安価である.さらに,光信号読み出しをホ-ル素子で行っているため,PMSの入射光を遮ることがなく,変換効率が上昇するなどの利点がある.今後,PMSの温度依存性の補償法,光応答特性,光応用システムなどについて検討する必要がある.
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