神経振動子間の相互可変結合と機能的階層構造

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03650334
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 河原 剛一 山形大学, 工学部, 教授 (20125397)
• キーワード: 神経振動子 / 呼吸リズム / 心拍リズム / 歩行リズム / リズム間相互結合 / 引き込み現象 / 機能的階層構造

研究概要

ハロセン麻酔下で除脳したネコの四肢をトレッドミル上に置き、中脳歩行誘発野(MLR)に微小電極を刺入して連続微小電気刺激を加え、トレッドミル上で歩行運動を誘発した。動物の歩容は、MLRへの刺激強度とトレッドミルに速さを変えることにより、slow一walkからgallopまで変化させた。呼吸リズムは横隔膜の筋電図で、心拍リズムは心電図のRーRインタ-バルで、歩行リズムは後肢・腓腹筋の筋活動で評価した。また、それら3つのリズム間の相互結合を、相互相関およびコヒ-レンス解析により定量的に評価した。安静時においては明確に認められた心拍リズムと呼吸リズム間の結合(cardioーrespiratory coupling,CーR coupling)が、歩行運動中には減弱する傾向が認められた。また、両側の迷走神経を切断し、呼吸中枢に対するfeedback afferentsおよび循環系に対する副交感神経系の影響を遮断した状態では、安静時におけるCーR couplingが著しく減弱するが、歩行運動時にはむしろ結合強化が起こり、CーR couplingに対する歩行運動効果の反転現象が存在した。一方、歩行リズムと呼吸リズム間の結合(locomotorーrespiratory coupling,LーR coupling)は動物の歩容に依存して変化し、gallop時には著しく結合が強化され、2つのリズムがほぼ1:1で同期する現象が認められた。それらリズム間の結合様式は、心拍リズムが呼吸リズムによって変調され、呼吸リズムが歩行リズムによって変調されるが、それらの逆結合は極めて弱いか存在しないものと考えられる。よって、複数生体リズム間の相互作用はほぼ一方向性結合であり、可変結合型の階層性を有するものと推定された。

研究成果

• [文献書誌] 河原 剛一: "Descending inhibitory pathway responsible for simultaneous suppression of postural tone and respiration in decerebrate cats" Brain Research. 538. 303-309 (1991)
• [文献書誌] 鈴木 正幸: "複数生体リズム間様互作用の位相反応曲線による解析" 電子情報通信学会技術研究報告. MBE91ー64. 33-38 (1991)
• [文献書誌] 吉岡 俊宏: "歩行運動時における心拍リズムゆらぎと呼吸性不整脈" 電子情報通信学会技術研究報告. MBE91ー65. 39-44 (1991)
• [文献書誌] 河原 剛一: "Simultaneous suppression of postural tone and respiration and its functional significance in the respiratoryーmotor coordination" Cardiorespiratory and Motor Coordination. 200-207 (1991)
• [文献書誌] 河原 剛一: "Concurrent depression of respiratory and antigravity muscle activities by stimulation of the pontine dorsal tegmentum in decerebrate cats" Advances in the Biosciences. 79. 271-273 (1991)
• [文献書誌] 宮本 嘉已: "Coupling between respiratory and stepping rhythms during locomotion" Advances in the Biosciences. 79. 43-49 (1991)
• [文献書誌] 河原 剛一: "Neurobiological Basis of Human Locomotion(分担執筆)" Japan Scientific Society Press,Tokyo, 167-172 (1991)
• [文献書誌] 河原 剛一: "Control of Breathing and Its Modeling Perspective" Plenum,New York,