研究課題/領域番号 |
03650338
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 良次 東京大学, 工学部, 教授 (80013811)
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研究分担者 |
宇野 洋二 (株)エイ, ティ・アール人間情報通信研究所, 主任研究員 (10203572)
西井 淳 東京大学, 工学部, 助手 (00242040)
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キーワード | 把持運動 / 神経回路 / 感覚統合 / 情報圧縮 / データグローブ |
研究概要 |
前年度に引き続き、視覚情報と体性感覚情報とを統合する砂時計型神経回路モデルの能力を理論と実験の両面から調べ、両年分のまとめを行って、学会、研究会で報告するとともに、学術誌に投稿した。 得られた成果の要点は次の通りである。 把持運動において脳が解くべき問題は、(1)把持対象の形状認識と(2)把持に適した手の構えの生成である。われわれはこれらの問題を解くことが出きる神経回路モデルを構成した。モデルの動作は2つの相に分けられる。一つは学習相で、把持対象と課題に依存した内部表現を獲得する。他は、最適化相で、緩和計算法によって最適な手の構えを生成する。内部表現の獲得には、第3層を共有する2つの砂時計型5層神経回路を用い、一方に視覚情報、他方に体性感覚情報を与え、それぞれ恒等写像を学習させて行った。寸法を変えたいくつかの円柱、角柱、球を用いた実験で、形状や寸法に対応した内部表現が第3層に獲得されることが示された。次に形状生成については、恒等写像の条件と、手を強く握るという拘束条件のもとに緩和計算を行い、最適な手の構えを生成することが出来た。さらに、把持の仕方を変えるように指定したときの手の構えの再現実験も行い、良い結果を得ている。 次に、我々が手に物を持って動かすとき、その重さに従って腕全体のダイナミクスが変化するので、筋張力もそれに応じて変えなければならない。しかし、ヒトは把持対象の質量を直接知らなくても腕を滑らかに動かすことができる。これは、学習によって把持対象の質量に関する内部表現が運動中枢に獲得されるからであると考えられる。本研究では、腕の姿勢を表す関節角と駆動トルクという観測可能な情報を用いて、把持対象の重さの内部表現を獲得できる神経回路モデルを構成した。
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