研究概要 |
1.寒天ゲルの透明度を昨年度よりもさらに改善するため,寒天の濃度を低くしたところ,ゲルの機械的強度が十分に得られなかった.つぎに,グリセリンを添加した可視化ファントムの温度対光減衰特性を測定したところ,曇点近傍における減衰量増加の傾きが小さくなった.このようなファントムでは白濁した部分と透明な部分との境界が不明瞭になることが明かになった. 2.寒天に代る可視化材料の探索を行った結果,ポリアクリルアミドゲルの他に,κ-カラギーナンやジェランガムの透明度が良好であることが光減衰量の測定により明らかになった.κ-カラギーナンとジェランガムは寒天と同じく多糖類であるが,イオンの添加によりエッグボックスジャンクションを形成し,ゲルの機械的強度が高くなるという特徴を有し,ポリアクリルアミドよりも実用的であることがわかった.ただし,ジェランガムは,エッグボックスジャンクションの形成により著しく透明度が悪化するために可視化材料には不向きである.そこで,イオンの添加による透明度の変化が最少なκ-カラギーナンを母材として用いた.κ-カラギーナンゲルの温度対光減衰特性は,界面活性剤の水溶液がもつ特性曲線とかなりよく一致し,減衰量増加特性の優れた可視化ファントムを得ることができた. 3.κ-カラギーナンゲルの直流域における導電率は,寒天ファントムなどとほぼ同じ傾向を示した.κ-カラギーナンを用いて容積が300mlの可視化ファントムを試作したが,ファントムを成形するための容器から取り出してもファントムの形は崩れなかった.また,このファントムを電磁波によって加熱したところ,内部に明瞭な白濁パターンを観察することができ,研究目的が達成された.
|