1.プロパー安定な有理伝達関数の近似度合の計量として、H∞ノルムとH2ノルムがよく用いられる。ノルムの違いが制御性能にどの様に反映されるかを調べることは工学的に重要である。とくに誤差評価を導出しておくことは、システム性能のロバスト性を定量的に評価する際に有用である。これに関して既に前年度の研究で有意な結果が導かれ、この結果を学術講演会で口頭公表した。本年度は先年得られた結果を、整理一般化し、完全なものとして学会誌で公表した。 2.アクティブノイズコントロール問題を実用化するには、時間遅れ関数の有理伝達関数近似問題という特に限定された問題を解く必要がある。この問題について、低周波領域での制御性能評価と誤差評価式が同時に得られるように、パデー近似の考えを導入した近似方法を提案した。そして、与えられた誤差の許容幅範囲を満たす有理関数近似の次数を見積もる簡便な方法を導いた。この結果は公表すべく準備中である。 3.モデル低次元化問題を時間-周波数的な立場から、新規に定式化を行った。従来の低次元化問題で困難なことは、早い現象と遅い現象が混在した応答の取扱である。これに対処するのに、時間-周波数的な考えが有効になるものと思われる。そこで、ウェーブレット変換を用いたモデル低次元化を試みた。現在の所、計算量が膨大になるなど実用化には程遠いが、新規な考え方でモデル低次元化問題が取り扱えるので、今後一層研究を進めてみたいと思っている。
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