太陽風と惑星磁気圏の相互作用を研究する上でエネルギー輸送に関与する電磁波動を直接計測することは不可欠である。本研究では、このような計測を惑星探査機によって行うことを目的として探査機搭載用の高速相関法の研究・開発を行った。これにより以下のような成果を得た。 (1)あけぼの衛星で観測された地球磁気圏内の電磁波動データの解析により波動スペクトル分布の特徴を明らかにし、また火星および木星の磁気圏で発生すると考えられる超低周波から高周波までの電磁波動を計算機によりシミュレートし疑似波動データを作成した。(2)相関法、およびフーリエ変換法によりスペクトルを求めるソフトウェア開発を行った。(3)小数ビット相関法でスペクトル測定を行うには、超低周波成分と高周波成分を分離して解析する必要がある。ヒスやホイスラのような比較的長い継続時間の信号のスペクトルは、小数ビット相関の極端な場合の1-bit相関法によって十分検出できる。これにより、記録または伝送すべきデータ量が著しく軽減できる。(4)相互相関法の場合、一方を多数ビットでサンプルし、他方を1ビットでサンプルすることにより、波動の偏波を推定することができる。これによって、データ量を約半減させることができる。(5)小数ビット相関法では、定常信号にパルス性信号が重畳する場合、パルス性信号のパワーが正確に推定できないことがある。(6)差分PCMやCODECにより、テレメトリー伝送すべきデータ量が30-50%圧縮できることが分かった。これらの点より、従来のフィルタ・バンク方式や掃引型分析法の他に、小数ビット相関法が1つの有力な手段であり、特にペイロードの制約が著しく厳しい場合には有効であるということが理解できる。これら諸点の理解に基づき、その応用として火星の電・磁圏探査機搭載用の電磁波動(DCから低周波)計測システムを、本研究の方式および他のスペクトル計測法と比較検討しつつ設計した。
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