研究概要 |
現在市販のすベての走査電子顕微鏡(SEM)で採用されている電磁偏向,電磁集束方式においてはヒステリシス等非線形特性が存在し,SEM画像を高速,高精度に,また,高い再現性で得ることが因難である。本研究ではこのような電磁型に代わって静電型の電子光学系を用いた走査電子顕微鏡法を確立することを目的としている。この目的のためには静電偏向,静電集束の電子光学系を最適化することが必要である。そこで,本年度は新しい電子光学系の設計を目的として,数値解析により,現有の市販の静電型電子銃を例にとって各電極が作る電位分布を求め,フィラメントから放出される熱電子の角度分布,エネルギ-分布を考慮して電子軌道を追跡するプログラムをほぼ完成させた。現在,この電子銃を用いてSEMとして動作させると仮定した場合に最も重要な,細い電子ビ-ムを得るためのグリッド電極,レンズ電極の電位および電子銃と試料表面までの距離などにおける最適値を求める作業に入るところである。一方,実験的には,電子ビ-ム偏向用の電源部分をほぼ完成させた。これはそれぞれ主走査方向,副走査方向へディジタル的に電子ビ-ムを走査するための信号発生部と,これを±30Vの範囲で高速に出力する増幅系から成っている。また,パ-ソナルコンピュ-タとのインタ-フェイスを製作しており,コンピュ-タによってSEMの電子ビ-ムの走査を制御できるように電子回路を製作中である。さらに,SEMの画像信号として用いる反射電子の検出系および信号処理系の製作を現在手がけている。
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