平成4年度には、実験的には基本的な走査電子顕微鏡(SEM)の動作を確認した。平成3年度に購入した電子銃駆動電源により市販の電子銃を駆動し、平成4年度に購入した直線導入機により真空外からビーム径制限アパーチャーの位置を設定して、より細い電子ビームを得ることを目的として実験を行った。具体的には、電子ビームの集束、偏向、フィラメント電流とビーム電流の関係とその加速電圧依存性などのパラメータについて測定した。アパーチャーを入れずに画像を取り込んだところ、約500μmのビーム径での画像が得られ、アパーチャーを挿入することによって約100μmの分解能が得られた。より高い空間分解能と信号強度を得るために加速電圧10KVがかかるように二段加速を行う回路変更を行っている。また、本システムのパーソナルコンピュータによる制御および信号処理を行う目的からインターフェイスを製作した。現在、試料表面の電子ビームの二次元走査、検出器からの信号の256×256画素256階調でのファイルへの取り込みおよび表示が可能である。 一方、数値解析においては、現有の電子銃内の各電極が作る電位分布を求め、フィラメントから放出される熱電子の角度分布、エネルギー分布を考慮して電子軌道を追跡するプログラムを完成させた。この電子銃を用いてSEMとして動作させるのに最も重要な、細い電子ビームを得るためのグリッド、レンズ電極の電位および電子銃と試料表面までの距離、さらに、電子ビーム径制限アパーチャーの位置、穴径などについて上記の二段加速の状態における最適値を求める作業に入っている。
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