平成5年度には、電子銃の駆動、電子線偏向系の電子回路、試料から放出された信号電子の増幅系、信号のパーソナルコンピュータへの取り込みおよび得られた電子顕微鏡画像の雑音成分の除去などの画像処理系などすべての装置類を完成することができ、一応の走査電子顕微鏡(SEM)としての動作を確認することができた。しかし得られた画像に関して、その分解能としては光学顕微鏡よりも低いものしか得ることができなかった。この主な原因として、用いた市販の電子銃の性能に問題があるためであると考え、理論解析によって新しい電子銃の光学系の設計を行った。設計に当たって、光軸をすべてのアパーチャはレンズをIn-lineに並べるために、2本の平行のレール上にそれらの光学素子を並べるようにし、その設計精度としては10mmの精度が出るものと仮定できる。レンズはできるだけ薄いレンズを構成するため、アインシェルレンズとし、これを2段使う。球面収差を押さえるためにその前後にアパーチャを挿入している。このレンズ、アパーチャのつくる電位分布は軸対象の2次元ラプラス方程式を解くことによって求め、その中を通る電子の運動を運動方程式に基づいて数値計算し電子軌道を追跡した。多くの電子軌道を描かせた結果電子の収束が最もよいものを選ぶようにした。ここではフィラメントの温度から生じる電子の初速度分布としてMaxwell-Boltzmannの分布を考慮している。この一連の数値計算を連続して行い、最もビームの収束が良くなる電極配置とその電位を求める計算アルゴリズムの開発も試みている。得られた電子光学系の持つ収差係数も現在計算中で、これらの兼ね合いから最も適当なレンズ位置、アパーチャー位置およびそれらの電位の値を決定する予定である。
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