設計の作業を大きく分類すると、安全率あるいは信頼性指標を決定する段階と、定められた安全率を満足するように部材の寸法や材料を決定する段階に分けられる。この内、第1段階は、過去に蓄積された事故等の統計や社会的、経済的影響等に基づき、設計基準として定められている場合が多い。しかし、過去に経験が少ない新しい構造物の設計では、設計者自ら、安全率や信頼性指標を設定しなければならない。合理的にこれらを決定するために重要な要素は、作用荷重や部材強度の統計的バラツキを考慮した強度評価と経済性や機能性等の定量的評価の二つであり、これを兼ね備えた手法のひとつが信頼性評価に基づく最適設計である。具体的には、個々の目的に応じて、問題は種々の最適化問題の形に展開できるが、部材の信頼性指標を直接操作できるという点で、部材信頼度の最適配分の考え方は非常に方れている。 一方、最終強度を限界とする場合においては、崩壊によって生じる被害の大きさが崩壊モ-ド毎に異なると予想されるので、特に破損の致命度を考慮した安全性評価が必要となる。そのためには、各崩壊モ-ドの致命度によって、モ-ド別の崩壊確率が合理的に設定されなければならないが、この種の問題に対しても、信頼度の最適配分という手法が適用できると思われる。 そこで、本年度は部材信頼性指標β_<Ii>に対応した量として、崩壊モ-ド別信頼性指標β_<Ui>を導入し、最終強度を限界状態とした場合に対するトラス構造の最適化手法を開発した。さらに、確率論的最適設計と確定論的最適設計、また、許容応力設計と最終強度設計の比較を通して、それぞれの特徴と意義を検討した。
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