平成3年度には、主として次の三つの項目について研究を進めた。 1.転覆の原因とみられる甲板上への海水打ち込み、打ち込み水の甲板上での挙動と復原性に及ぼす影響等についての検討と、それらを考慮して船舶が傾斜した場合の船体運動方程式の検討。 2.上述の運動方程式を用いた転覆現象をシミュレ-トするためのコンピュ-タ・プログラムの作成。 3.試験水槽において模型船による傾斜船の運動性能実験を実施し、傾斜状態での運動特性を把握するとともに、運動方程式の妥当性についての検討と、船舶の転覆現象を記述する運動方程式の確立のための基礎資料の収集。 船体が傾斜した状態では、船体の上下揺れおよび縦揺れのいわゆる縦運動と、左右揺れ、横揺れおよび船首揺れのいわゆる横運動が連成することが知られているので、この連成運動を説明できる運動方程式を確立することは、傾斜船の波浪中の運動を論ずる上で最も重要である。この運動方程式については、理論上ではほぼ確立の状態に達しており、数値計算するためのプログラムを現在検討中である。 傾斜船の波浪中での運動特性を把握するために、船長1.75mの模型船を用いた水槽実験では、満足のいくデ-タが得られた。得られた実験デ-タからも、傾斜状態の船体の波浪中の運動特性は直立状態とは明らかに異なり、縦運動と横運動の連成影響が明確に現れている。 傾斜船の運動特性を明らかにするための研究は、理論上は数値計算プログラムの作成、検討の段階まで致達しており、実験上は今後検討すべきと考えられるいくつかの課題を残してほぼ満足のいくところまで致達している。
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