研究概要 |
江戸末期から昭和20年までに建造され、かつ、現存している近代土木構造物の調査を、東海5県(愛知県全域と岐阜・三重・長野・静岡各県の特定地域)について実施した。調査は、アンケ-トの郵送・回収、既存の資料からの抽出、県の施設台帳の3通りの情報源を対象として、平成3年6月〜11月にわたって実施した。アンケ-トは該当する地域の全市町村の土木課と教育委員会をはじめ土木構造物の管理に係わる836の機関に調査用紙を発送し、301通の有効回答を得た。土木構造物の評価には現地調査が欠かせないため、アンケ-ト調査のその他の調査の結果を加えて選定した調査候補612地点を対象として、平成3年12月以降に現地検分をしている。現在までの段階で、416地点の現地調査が完了した。平成4年度には残り地点の調査、ならびに、調査対象地域の拡大を予定している。 土木構造物の評価には、従来の文化財的な視点とは異なった評価軸の導入が必要である。本調査研究を実施していく中で、平成4年2月には、近代土木構造物の評価基準(6評価軸,加減点法)を暫定的に提案し、612件の構造物を、(1)東海5県を代表する近代土木遺産(将来の文化財候補)20件、(2)重要度の高い土木構造物40件、(3)重要度は高くないがそれなりに立派な土木構造物10件、(4)それ以外の4通りに区分することができた。本評価試案により客観的・総合的評価が可能になったことは、今後予定されている土木学会・土木史研究委員会の調査、ならびに、文化庁の調査の方向性を決める上で大きな役割を果すことが期待される。また、現実の構造物に対しても、保存するか更新するかを判断するための基準を与えることから、「本当に良い」近代土木遺産を次世代に残していく道を開くものである。
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