本研究は実際のRC構造物の長期変形・ひびわれ幅を高い精度で予測する際に不可欠な変動する温湿度などの環境条件の相違が長期変形・ひびわれ幅に及ぼす影響を把握するため、平成3年度より恒温恒湿室、屋内、屋外においてRC曲げ部材の持続載荷実験を実施した。また、平成3年度に開発した変動する温湿度条件下のRC部材の長期変形・ひびわれ幅の子測方法の妥当性について検討した。平成4年度の結果をまとめると以下のとおりである。 1.RC部材の長期変形・ひびわれ幅の主要因であるクリープ係数は屋内、屋外、恒温恒湿室の順に大きく、乾燥収縮は屋内と恒温恒湿室はほぼ等しく、降雨の影響により屋外が最も小さかった。 2.平均曲率の実測値は試験期間約400日において圧縮鉄筋の有無に関わらず屋内、恒温恒湿室、屋外の順に大きかった。この挙動は環境条件によって異なるクリープ、乾燥収縮の物性値と対応している。また、平均曲率の経時変化は圧縮鉄筋がなければこれら物性値を取り入れた本解析法によりおおむね予測できた。 3.平均ひびわれ幅は必ずしも明確ではないが、屋内、恒温恒湿室、屋外の順に大きく環境条件の影響が認められる場合があった。解析結果は実測値と比較的良く一致した。 屋内と屋外では温湿度の変動により圧縮鉄筋のある場合圧縮鉄筋とその周辺のコンクリートとの間に応力のやりとりが常に行われていると考えられ、有効弾性係数法では圧縮部コンクリートひずみが実測値より小さくなり変動する温湿度の影響を評価できなかった。しかし、付着応力ーすべり量関係に基づき応力履歴を考慮した本解析法は変動する温湿度の影響を評価し、限られた実験データの範囲ではあるが実測されたRC部材の挙動を比較的良く説明でき、環境条件の異なるRC部材の長期変形・ひびわれ幅の解析法として妥当な方法と考えられる。
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