本研究は、プレストレストコンクリート構造物(PC構造物)の塩害補修工法としての電気防食法の利用可能性を検討するものである。本年度は、昨年度からの継続課題である防食基準に関する検討および、電気防食の実施工上の問題点の把握とその解決策についての検討を試みた。本年度の主な検討内容と主な結果を以下に示す。 1.Elogl試験の結果によると、通電初期の段階で防食上必要となる分極量は多くの場合‐200〜‐250mV程度であった。また、より長期的な通電実験の結果からも、少なくとも‐100〜‐150mV以上の分極量がないとコンクリート中の鋼材は防食性は十分には確保できないと予想された。なお、Instant off 電位の測定は、分極量の測定に当たって欠くことのできない測定であるが、その測定方法についても1提案を行った。 2.ポストテンショニング方式のPC構造物の場合、シースから排流点を取って通電させても、内部のPC鋼材へも電流は供給される。ただし、この結果は、シース中のグラウトの充填が不十分な場合には、PC鋼材への電流の分布が不均一となり、鋼材の防食に悪影響を及ぼす可能性もあることを示唆するものでもある。 3.実構造物における電気防食法の施工上の問題点を探るため、鉄筋腐食劣化の生じたRCガレージに対して電気防食施工を実施した。この施工実験から、外部からの直接的な水分の供給がほとんど考えられないガレージ内面に対しても、問題が生じない範囲の電流量で十分な電気防食が可能であること、腐食鉄筋のケレンの程度によって、電気防食によるその後の補修性能はかなりことなること等を確認できた。 4.電気防食システム施工の簡略化を図る方策の1つとして、陽極材をあらかじめ埋め込んだ永久型枠の開発を行った。
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